友禅作品集(羅刹女伝シリーズ)
「あさましや、恥ずかしのわが姿や」闇の中,這いずり回り、獣のように吠えていました。こんなことが起きるはずがない、この私に・・・夢です!
けれど、夜は白み、現実はのたうちまわりながら過ぎていきました。
絶望、嫉妬、屈辱、憎悪・・・・・・
井上靖著「羅刹女国」に出会ったのは、一年もたったころでしょうか。
いったん男の裏切りを知ると本来の夜叉にたちもどり、
相手をむさぼり喰らわずにはいられない運命なのです。
誰が好んで悪鬼になりたいでしょう。鬼女の哀しみ,慟哭は私を満たし、
たちまち画稿の紙面にたち現れました。
鬼の心=心の地獄、そのただなかにいるときほど、
心の平安=成仏を願うことはありません。
心の地獄から心の浄土を希求する、成仏の過程を表したものが「羅刹女伝」の連作となりました。